症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/10/15 (金)

胃腸が弱い・下痢

漢方的にみる下痢
下痢のことを漢方では「泄瀉(せっしゃ)」といい、ドロッとした軟便や水様便、未消化便など様々な状態を含みます。

消化吸収の働きを担う「脾」の不調により起こりますが、その原因は様々。
漢方的な病因としては大きく5つ。
どれか一つではなく、複数の病因が合わさって起きている場合もあります。
(1)感受外邪
自然界の原因(外邪)を受けた時に起こる場合です。

漢方では「湿がなければ下痢はない」と言われるほど、まずは「湿邪(しつじゃ)」つまり湿気による影響で下痢が起こります。

中でも季節的な胃腸カゼとして、
冬場は「湿邪」と「寒邪(かんじゃ)=寒さ」
夏場は「湿邪」と「熱邪(ねつじゃ)=熱」
が結びつくことで、脾を崩して下痢になる例はよくみられます。

このような場合は、邪気を追い出すとともに脾を整える漢方薬を使います。
代表的な漢方薬
香蘇散、藿香正気散、半夏瀉心湯など
 
(2)飲食失調
・食べ過ぎや飲み過ぎ
・脂っこいものや生もの、冷たいもの、甘いものの食べ過ぎ
・腐ったものを食べた
などにより下す場合です。

いずれの場合も脾を傷める直接的な原因となり、下痢が起こります。

無理に下痢を止めるというよりも、脾を休めて回復させること、消化を促すことを大切にします。
代表的な漢方薬
胃苓湯、茵蔯五苓散、化食養脾湯など
 
(3)肝気鬱結
いわゆる神経性の下痢。
ストレスや精神不安定により気の巡りが乱れ、脾の働きが悪くなり、下痢が起こります。

気が上に逆流してゲップが出たり、もともと脾の弱い方は食欲不振もみられることもあります。
代表的な漢方薬
柴苓湯、柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遙散、柴芍六君子湯など
 
(4)脾胃虚弱
もともと脾が弱く、他の病因が加わることでさらに下痢を起こしやすくなる場合が最も多いです。
また他の病因が続くことで脾が弱る方もいます。

漢方薬としては根本的に脾を立て直すことが重要。

さらには精神面やお食事面など、影響を受けやすい要因との付き合い方を見直すことが、慢性化させないためには大切です。
代表的な漢方薬
香砂六君子湯、補中益気湯、参苓白朮散、半夏白朮天麻湯など
 
(5)腎陽虚弱
冷えると弱ってしまう脾を、主に温めてくれているのが「腎」。

腎は生命エネルギーを蓄え、発育や生殖、加齢に関わる機能。
しかし過労や加齢などで腎が弱ると、脾を温めることができなくなり、下痢が起こりやすくなります。

特に明け方の腹痛を伴う下痢や手足の冷え、腰の冷えや痛みがみられます。
代表的な漢方薬
人参湯、真武湯など
 
『胃腸が弱い・下痢』を根本から改善するには、漢方薬を
「少し食べ物を食べただけで、胃がムカムカしてしまう。」
「すぐにお腹を壊して、下痢になりやすいのを何とかしたい。」
などの胃腸症状でご相談いただく方は、季節を問わず多いです。


そもそも胃腸には、食べたり飲んだりしたものを消化し、栄養素を吸収するという大事な役割があります。

漢方の世界でも、消化機能を主る「脾」は非常に重要。
「脾」が弱っている時は、他の不調に対して漢方薬を飲む時も、「脾」に負担をかけないよう細心の注意を払い、まず弱った「脾」を立て直す漢方を飲んでいただくことも多いです。

また、ストレスにより自律神経の緊張状態が続いたりすると
「食べ物をうまく消化できない」
「過敏に反応して下痢になってしまう」
などの症状を引き起こします。
胃腸そのものに病気がなくても、胃腸の働きはたくさんの自律神経の支配を受けているためです。

そして十分に栄養を吸収できない状態が長く続くと、心身ともに栄養不足となり、場合によっては不眠・不安感といった症状が出ることもありますし、不快な症状自体がストレスになってしまいます。


漢方相談では、まずはいま体の中でどういうことが起こっているのかを漢方的に紐解き、お一人お一人に最適な処方を選んでいきます。

そもそも体のバランスが乱れる原因は、心・食事・運動・休養・環境の乱れ。
漢方薬を飲むとともにこれらを見直していくことで、自分の良くなる力をより発揮できるようになり改善への大きな後押しとなります。

繰り返す胃腸のお悩みでお困りの方は、ぜひ一度漢方みず堂にご相談くださいませ。
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