症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/05/15 (月)

【就寝中の身体】

日中、身体を動かしたりスマホを見たり、人と話して感じたり考えたり、ご飯を食べて消化・排泄したり・・・
様々な活動のために、エネルギー・栄養分・体液=「気・血・津液」を使い、あらゆる臓腑が働きます。

身体が眠りに入ると、下記のような体内のメンテナンスが行われます。

(1)体液を通して全身を温め、老廃物や免疫細胞、ホルモンなどが循環し全体のバランスを調節
(2)臓腑を休めて「気」の消耗を防ぎ、疲労を回復
(3)脳が経験学習したことを記憶に定着させる
(4)「血」が肝臓に戻り、毒素や老廃物を解毒・浄化
(5)腸で便を作る
など

これらのメンテナンスは、効率的に行いやすい時間帯、というのがあります。

(1)体液循環の通り道「三焦(さんしょう)」が充実する21時~23時
(2)(3)身体活動の調節や記憶と関係する「胆」の経絡が充実する23時~1時
(4)「血」を貯蔵する臓器「肝」が充実する1時~3時

(5)は夜間を通して準備され、大腸が活発になる5時~7時に便意をもよおします。


このメンテナンスの時間に起きて活動を続けている場合、各臓腑・経絡に気・血・津液が届かず、十分なメンテナンスが行われない状況に。
つまり、疲労や毒素・老廃物が蓄積し、あらゆる不調に繋がります。

□ 疲れやすい
□ 風邪をひきやすい
□ アレルギー疾患
□ がん
□ 肌荒れ
□ 高血圧、糖尿病、脂質異常症
□ 肥満
□ 便秘、下痢
□ 自律神経失調症
□ 不眠症
□ 生理不順、PMS
□ 不妊症
□ イライラ、気分の落ち込み
□ 物忘れ、認知症
等など
 
睡眠不足と肥満
規則正しい睡眠により自律神経が整うお話は先述しましたが、ホルモンバランスにも影響します。

例えば、睡眠不足は食欲増進ホルモン(グレリンなど)の分泌を増やし、食欲抑制ホルモン(レプチンなど)の分泌を減らすとの報告が。知らぬ間に食べる量が増えることで、肥満や生活習慣病に繋がる可能性が考えられます。
 
睡眠不足と認知症
近年の研究では、アルツハイマー型認知症も睡眠不足が要因のひとつだと考えられています。

アルツハイマー型認知症の人の脳内に蓄積されている原因物質「アミロイドβ」は、まさに老廃物。
睡眠中は脳内で分泌される脳脊髄液の流れがよくなり、この老廃物が除去されるそう。
そのため、睡眠不足になると老廃物のアミロイドβが蓄積していく…という訳です。
 
毎日起きている間、意識的にも無意識的にも働き続けている私たちの心と身体。

21時以降はできるだけ休めてあげることで、翌朝また元気に活動できるサイクルが、私たちには備わっているのです。
 
 
[参考資料]
『Newton別冊 睡眠の科学知識』株式会社ニュートンプレス 発行
『体内時刻を制すれば痛みが消える!不調がなくなる!』鈴木康玄 著
『中医学の基礎』東洋学術出版社 発行