症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/10/14 (木)

咳・痰・喘息

漢方的な原因
咳や痰などの呼吸器系に関連する働きを、漢方では総じて「肺」といいます。

咳や痰の症状が出る原因としては、漢方的には主に6つ。
これらの複数が絡み合っている場合も多いです。
 
(1)六淫外邪
六淫とは、
「風邪(ふうじゃ)」「寒邪(かんじゃ)」
「燥邪(そうじゃ)」「熱邪(ねつじゃ)」
「湿邪(しつじゃ)」「暑邪(しょじゃ)」
の六つの邪気のこと。

これらの内、特に「風邪」「寒邪」「燥邪」「熱邪」は肺を傷つけやすく、侵されると咳や痰、鼻水、悪寒、発熱などの症状が出ます。
いわゆる風邪(かぜ)を引いた時の症状ですね。

外的な要因なので、ゆっくり休むなど養生することで自分で治す力が発揮されれば短期間で治りますが、弱っている方は長引いたり症状が悪化する場合も。
代表的な漢方薬
麻黄湯、小青竜湯、小青竜湯加石膏、麻杏甘石湯など
 
(2)脾失運化
漢方では、栄養分・水分などの消化吸収をしたり、体に巡らせる胃腸の働きを「脾」といいます。

もともと脾が弱い方や、冷えた飲食のし過ぎ、脂っこいものの食べ過ぎなどで脾が弱っている方は、水分の巡りが悪くなり停滞し「痰」が生まれます。

脾と肺はいつも協力して全身へ水分を巡らせる作業をしているのですが、この痰が肺の働きも阻害することで、咳や痰の症状が出てきます。
痰の量は多く、食欲不振や軟便なども見られます。
代表的な漢方薬
二陳湯、竹茹温胆湯、半夏厚朴湯、六君子湯など
 
(3)肝火犯肺
漢方で情緒的な影響を受けやすいのが、気の巡りを調節している「肝」。
自律神経と関わりが深いです。

強いストレスやイライラ、怒りっぽいなどの精神的刺激が過剰な場合、肝の働きは乱れます。

肺も、呼吸によって体の内外に気を出入りさせたり、全身へ水分を巡らせるために気を動かすので、肝が乱れると肺の気も乱れます。
すると、激しい咳き込みや血痰が見られることもあります。
代表的な漢方薬
柴朴湯、滋陰至宝湯、柴胡桂枝乾姜湯、神秘湯など
 
(4)肺気虚
呼吸を主る肺の気が不足すると、息切れ、疲労感、汗が出やすいなどの症状を伴う、力のない咳が見られます。
痰は薄く量は多くなりがちです。
代表的な漢方薬
六君子湯、香砂六君子湯、人参養栄湯、補中益気湯など
 
(5)肺陰虚
肺は程よく潤っている状態が好き。
潤い成分「陰液」が不足すると、気が上に逆流しやすくなり、咳が出やすくなります。

潤いが少ないので、空咳や痰が少なく切れにくい咳が見られたり、夜間に出やすいです。
手足や顔のほてりが見られることも。
代表的な漢方薬
麦門冬湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、味麦地黄丸、清肺湯など
 
(6)腎虚
「肺は呼気を主り、腎は納気を主る」といわれ、肺が弱ると息を吐く力が、腎が弱ると吸った気を納める力が弱くなります。

気を納められず呼吸が浅くなると、気が上逆しやすくなり、咳が出ます。

腎が弱っていると水分代謝も落ちるので痰が出やすくなる場合もありますし、腎の潤いが不足している場合は空咳が見られることもあります。
下半身の冷えや足腰のだるさなどが見られることも。
代表的な漢方薬
滋陰降火湯、味麦地黄丸、八味地黄丸、麻黄附子細辛湯など
 
『咳・痰・喘息』を根本から改善するには、漢方薬を
漢方みず堂にご来店いただくお客様の中には、
「夜になると咳が出る」
「痰で声が出しにくい」
「一度咳が出始めると止まらず、息苦しい。」
など
長年『咳・痰・喘息』に悩んでいる方からご相談いただくことも多いです。

『咳・痰・喘息』は呼吸器系の症状ですが、肺や気道、気管支に問題がないのに、なかなか症状が治らないという方もいらっしゃいます。


漢方では『咳・痰・喘息』の原因は本当に様々。
元々の虚弱体質や胃腸の不調、自律神経の問題、過労や老化による栄養不足などにより、長引くことが多くなります。
小児喘息や風邪を引きやすいタイプの方は、体を防御する力が足りないこともあります。


漢方薬は、咳を抑え込むのとは違い、根本の原因から改善し、症状が出ないように導きます。
体力がついたり、自律神経が整うので、普段の生活がとても楽になったとおっしゃる方も多いです。

また、体のバランスが乱れる原因は、心・食事・運動・休養・環境の乱れ。
漢方薬を飲むとともにこれらを見直していくことで、自分の良くなる力をより発揮できるようになり改善への大きな後押しとなります。

長引く咳・痰でお困りの方は、ぜひ一度漢方みず堂にご相談くださいませ。
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