症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2020/11/06 (金)

下半身の冷えと漢方〜八味地黄丸(はちみじおうがん)〜

漢方で下半身の冷えは「腎」の衰えと捉えます。
「腎」とは生命エネルギーが宿る場所とされ、年齢とともに衰えるものでもあります。

赤ちゃんが欲しい方、下半身が水に浸かったように冷えているという方は、ぜひ漢方で「腎」を強化して、冷え知らずの体を手に入れましょう!
 
下半身の冷えに温補腎陽(おんほじんよう)薬
「八味地黄丸」は、「八味腎気丸」とも「八味丸」とも言われ、これらはまったく同じもの。
温補腎陽薬の代表的漢方です。


八味地黄丸が合う体質の特徴は
1.寒がりで元気がない
2.精力減退、子宮発育不全など性機能低下がある
3.むくみ、多尿、乏尿、腰痛がある


といったタイプ。
冷え症はじめ不妊症やアンチエイジング、加齢による症状に使われます。


「温補腎陽」とは文字通り、
「腎の温める力(陽)を補い、温めていく漢方」
と解釈できます。

「腎」とは人間が持つ生まれ持った力が宿る臓器。
したがって、力が宿るためには温めることが肝要で、冷えると生命力が衰えると考えます。
逆に言うと、冷えると体が衰えていくとも解釈できます。

お年寄りは何枚も重ね着をしたり、いたるところにカイロを貼ったりしますよね。
お年寄りではなくとも、冷え症の方は身に覚えがあると思います。

腎は、西洋医学的な意味での腎臓の役割も持つので、トイレが近かったり、尿漏れにも関係します。
八味地黄丸=トイレが近い・我慢できない=お年寄りの漢方と考えられがちで、テレビコマーシャルでもそのようなうたい文句になっています。


しかし上記に記載したように、八味地黄丸は「温補腎陽薬」。

したがって、体力的に弱々しくて、冷え症で、貧血気味で、代謝が落ちることによってむくみもあり、寒がりタイプの方の漢方と言えます。
女性であれば、生理時の血塊や経血量が少ないという症状もみられる場合もあります。

あえて言うならば、「60歳以上の方の保健薬」とも言えますし、「女性の味方八味地黄丸」とも言えます。

夏でも手足が冷たく、肩こり、むくみ、生理不順があった20代の女性や、毎年冬になるとしもやけができる中学生に使用して大変効果があった経験もあります。
 
中身を見てみましょう
八味地黄丸の中身を見てみると、
熟地黄・山薬・山茱萸・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮・附子

何といってもここでピリッと効かせてくれているのは附子でしょう!
トリカブトの毒性をなくしたもので、体を非常に温め余分な水分を出してくれる生薬です。
 
徳川家康も愛用!?
健康オタクだったと言われる徳川家康が愛用していたとされる漢方薬は、八味地黄丸です。
江戸幕府を開いた徳川家康(1543年~1616年)は、戦国武将の中でも長命(73歳)だったことで有名。65歳で16人目の子供を設け、亡くなる前年まで鷹狩りや水泳を楽しんだほど健康でした。
そんな家康の7つの健康法をご紹介します。

(1)粗食
家康は「ぜいたくは月に2〜3度で十分」と言い、麦飯と八丁味噌中心の一汁一菜の1日2食を常としていました。

(2)冷たいものは口にしない
夏でも、きちんと火を通したものを食べる習慣を身につけていたという家康。衛生状態の悪い当時、有害な雑菌やウイルスを体内に取り込まないための知恵ですね。

(3)季節はずれのものは食べない
ある年の11月、織田信長から桃が届けられたが季節外れのものは食べない、とすべて家臣に与えてしまったという逸話が残っています。

(4)肉もほどほどに食べる
粗食を好む一方で、キジやツルなどの焼き鳥を楽しんでいたといいます。70代になっても鷹狩りに出かけていたという旺盛な体力は、肉食から生まれたのかもしれません。

(5)体を動かす
鷹狩りの他、剣術、弓術、水泳、乗馬などを好んで行っていたようです。

(6)ストレス発散
香木をたいて、そこから立ち上る香りを嗅いだり、香の名をあてたりする「香道」。現代のアロマテラピーを家康も好んでいたようです。

(7)薬について学ぶ
久能山(静岡県)の麓に薬園を設け、100種類を超える薬草を栽培していたといわれ、八味地黄丸を愛用していたと言われています。
 
八味地黄丸で良くならなかった時
もちろん、すべての方に八味地黄丸が向いているわけでもありません。
とくに女性の冷え症の場合は、様々な漢方薬があります。

また、八味地黄丸をはじめとする「地黄丸」「腎気丸」という名前の漢方薬は、胃腸が弱い方には不向き。
・胃腸が弱くて冷えが強い場合は、人参湯
・冷えて下半身がむくむ場合は、苓姜朮甘湯
など、他の漢方薬が適しています。

ぜひ自分に合った漢方薬を、専門のところで選んでもらってください!