症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/10/19 (火)

朝方早く目覚める時に飲む漢方〜高齢者の不眠〜

朝方早くに目が覚めてしまうタイプの不眠

明け方トイレに行き、それから目が冴えて眠れなくなってしまう、夜中に何度もトイレで目が覚める・・・など、眠れない症状に加えて、腰痛や耳鳴り、頻尿などのいわるゆ老化現象を伴うことがあります。

原因は「腎」が弱くなっている

漢方の考え方としては、人間の生命エネルギーである『腎』が弱っていると考えます。
「眠る力がなくなってきている」とも言えます。
これを、『腎虚(じんきょ)』といいます。
年齢と共に、自然と弱まっていくのが『腎』で、生命エネルギーが弱るということは=老化、とも考えられています。
ただ、『腎』は両親から受け継がれるものでもありますので、生まれながらに弱い人もいます。
また、睡眠不足や過度な疲労が重なることでも、腎はどんどんすり減ってしまいます。

腎を補う代表処方

朝方早く目覚める、その他の老化現象がある場合は、『腎』を補う六味地黄丸(ろくみじおうがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)が一般的な処方になります。

ほてりや寝汗・口渇などが強い場合は六味地黄丸を、冷えやのぼせが強い場合は八味地黄丸をおすすめします。

早く起きる+寝付きも悪いという場合

ある程度の年齢になると感じ始めていると思いますが、ひとは年々、体の潤いが減っていきます。これは「腎」の水(=陰)が減っている証。

そうすると、火を消す水がない状態になり、体の中でちょっとした炎症が起きやすくなります。このことを「陰虚」と言います。

「腎」には「陰」と「陽」があり、陰は簡単に言うと冷ましたり、休めたり、回復させる力のこと。陽は体を温める力のことです。
陰虚とは、体の潤いが失われている状態のこと。冷ましたり、休めたり、回復させる力が弱っている状態のこと。

陰虚の状態に、カーっとなったりショックな事など、精神活動や睡眠を司る「心」の火の勢いも加わると、水がどんどん蒸発・・・。火の勢いを止める術なく、いつも「心」の暴走状態。心が騒いで、ゆっくり眠れなくなります。
人の体は少し体温が下がることでスムーズに入眠できますが、火・炎症を抑えられず、寝付きも悪くなります。

この状態になると、手足のほてりや寝汗、口渇、焦燥感などの熱症状が加わるようになります。

このタイプには、腎陰を補い、熱をしずめてくれる黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)や清心蓮子飲(せいしんれんしいん)といった漢方薬が使われます。

生活養生ワンポイント

体の潤いが不足して起きている症状には、身体を潤して昂った気を鎮める食材がおすすめです。
◉食材…レタス・ほうれん草・小松菜・アスパラガス・柿・白木耳・白胡麻・卵・豚肉・鴨肉・アワビ・帆立・カキ

高齢者の不眠症の改善例

【お客様背景】
・81歳の女性
・眠れないときが多く10時~11時には床に入るが、寝付けなくて2時くらいまで起きている。
・病院の薬を飲んでも眠れない。
・ひどくはないが咳がちょこちょこ出る。乾燥したときは特に。
・ふだん疲れていて、あまり動けないし動きたいと思わない。
・足がほてる。特に夜に。
・口が渇く。そしてよく水分を取るが、冷たいのがいい。
・食欲、お通じは普通。
・残尿感が時々。家ではしょっちゅう行くので頻尿かな?と思っている。

【漢方的解説】
典型的な「腎」が消耗して「陰虚」になっている状態です。
寝付きが悪い/咳が出る/足がほてる/口が渇く
これは全て体に火が起こっている状態です。その火を消したくて、冷たいものが欲しいということなんですね。
こんな時は漢方では「腎」を補うものの中でも特に「陰」を補う「補陰剤」というものを使い熱をしずめていきます。

【経過】
補陰剤の中でも特に下半身の熱症状をとる漢方を飲んでもらいましたが、これはとにかく苦い!
大丈夫かな?と心配していましたが、返ってきた言葉は、「あれって少し甘いですよね」・・・?不思議と漢方は合えばおいしく感じると言います。
身体に合うと改善も早く、2週間目で身体が軽くなり、肌の調子も良くなったみたいで、友達から「化粧品変えた?」「何か若くなったね」と言われるくらいに。ほてりも軽くなり、咳も回数が減るように。
1か月後には足のほてりは2~3日に1回くらいに。血液検査の数値も全て正常範囲に。
眠剤を飲んでも眠れなかったのがぐっすり眠れるようになり、途中起きてもまた眠れるように。いつの間にか週4日は外出して動き回って疲れる。でも、翌朝元気に!
現在は足のほてりもなく、咳もほぼ消失し元気な毎日を送っています。

証を見極める

典型的な高齢者の不眠のタイプをご紹介しましたが、上記のタイプにぴったり合うという人もいれば一部は合うけどと、人によって様々で、一概にいえることではありません。
実際に現場でも、上記以外の漢方薬を使うことは多々あります。
症状だけをみるのではなく、あくまで大切なのは、その人の「証」(体質)をちゃんと見極めることです。

睡眠薬がないと、眠れない…という方も、今一度自分の体質から見直してみませんか?
そして、自然な眠りを取り戻してみませんか?