症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/06/13 (火)

【もぐもぐする利点】

現代人が1回の食事で噛む回数は、戦前の半分以下だという説も。

軟らかく短時間で食べやすい物が増え、仕事の合間にササっと済ませたり、何かをしながらつまむように食べたりと、「ゆっくり味わって食事と向き合う」という豊かな時間が忘れられやすい時代です。

しかし、ゆっくりよく噛んで食事をすることにはメリットがたくさん!
今日から「もぐもぐ」、毎日「もぐもぐ」して、楽しく健康になりましょう♪
 
(1)唾液が分泌されやすくなる
食事の際に分泌されるサラサラした唾液は、漢方では「涎(えん)」といい「脾の液」とされます。
口腔粘膜を保護し、口腔を潤し、嚥下と消化を助ける働きがあります。

それにより、

・胃腸での消化の負担が軽減される
・脾胃虚弱な方は、栄養分を吸収しやすくなる
・口臭やドライマウスが緩和される
・虫歯予防や感染予防になる

など、脾胃の元気の維持に繋がります。


ところで、唾液の中でも比較的ねっとりとしたものは、腎の液「唾」。
腎は生命エネルギーの源であり、加齢によって衰えやすい働きですが、唾を飲み込むことで腎の力が滋養されると言われています。
(2)顔周りを中心に気血のめぐりが良くなる
噛むことは、顔の筋肉を動かすこと。

・顔色がよくなる
・表情が柔らかくなる
・シワやたるみ予防になる

という利点は想像しやすいですよね。


漢方的にみても、顔には様々な経絡=気血の通り道があり、特に咀嚼筋周辺には胆経、小腸経、大腸経が通っています。
簡単に分類すると、胆は自律神経系、小腸・大腸は消化・吸収・排泄に関係しています。

これらの気血のめぐりが良くなることで、

・目が覚める
・思考がクリアになる
・集中力や記憶力が高まる
・気持ちがリラックスする、スッキリする
・胃腸の蠕動運動が活性化する

などに繋がることが考えられます。

実際に、咀嚼によって目の血流が増えたり、記憶に関わる脳の海馬や、思考・感情・行動に関わる前頭前野の血流量が増えたという研究報告もあります。
(3)食欲が満たされる
「よく噛むと満腹中枢が刺激され食欲が抑えられる」というのは、皆さまも聞かれたことがあると思います。
この刺激が伝わるまでには、15~20分かかるそうですよ。

・ダイエット中の方
・血糖値が気になる方
・その他、生活習慣病で体重を落としたい方
・暴飲暴食しがちな方

などは、まずは「ゆっくりよく噛んで食べる」ことの実践が続けやすいかもしれませんね。
(4)噛む力が維持される
噛んで食事をするには、歯の健康ももちろん大切ですが、口腔周りの筋肉や舌の筋肉も必要です。

筋肉は日々使うことで鍛えられるもの。
毎日噛むことを続けることで、自分の口で食事する力が維持されます。

とくに年齢を重ねると入れ歯などの力も借りるようになりますが、やはりよく噛んで食べることは健康維持に不可欠。

「噛む力=食べる力=脾の力=生きる力」

噛む力を維持することで、できるだけ永く、美味しく楽しく命を養ってまいりましょう。
 
 
 
 
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〔参考資料〕
『中医学の基礎』東洋学術出版社
『噛むだけでやせる!超健康になる!』マキノ出版ムック
『誰も気づかなかった 噛む効用』日本咀嚼学会 編