症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2022/03/14 (月)

【大切なのは“しなやかさ”と“強さ”】

木村さんの作るリンゴは、全く病気にかからないわけではありません。
でも、リンゴの木が自分で病気になっている葉っぱに穴をあけたり、同時に新しい葉を生やしたりするそうです。

これは人間も同じですね。
毎日細胞が生まれ変わる中で、健康な人でも一日5,000個できるがん細胞は、アポトーシスといって自分の免疫力で消しています。
これは、風邪をひいた時に、熱を出したり咳や鼻水を出したりして治そうとするのとも似ているように感じます。


病気になっても、自然に治そうとする力が働いている。
煩わしく感じる症状も、治そうとする力が働いている証拠。
「今バランスが崩れているよ!」「今の生活はちょっと負担がかかっているよ!」と教えてくれているようにも思います。

一見、不都合で不快に感じることが起きたとしても、それを力ずくで抑え込むのではなく、一旦受け止めてみる。何が起きているのか耳を傾け、柔軟に対応していく。

症状にしても、日々の出来事にしても、そのような“しなやかさ”を意識すると、本来もっている自然治癒力が発揮され、バランスを取っていきやすいのではないかと感じます。
そしてこの時、
「自分には絶大な自然治癒力が備わっているのだから、きっと乗り越えられる!」
「きっと良くなる!私なら大丈夫!」
という、自分の力を信じる“強さ”がとても大きな支えになっているとも感じます。


私自身、先輩相談員や自分の経験を通して、自然治癒力が発揮されたときの人の生きる力の凄さに気付かされ感動させられています。

中には漢方の力を借りずとも、大きな困難を克服された方のお話も伺いました。

交通事故で重度の脳損傷を受け、医師の診断では片目失明と半身不随は確実、義眼も勧められていた方。
でもご自身は、きっと見えるようになる!絶対に良くなる!と信じてリハビリも頑張られたとのこと。
結果、失われていた視力はほぼ完全に回復し、身体も装具なしで普通に生活できるほどに。担当医師もこれは説明がつかなかったと。先輩曰く、このお話を伺うまでは身体障害があるようには見えなかったそうです。

きっと並々ならぬ努力があったはず。それも含めて、人間の自然治癒力が本領発揮すると凄いのです。


漢方は自然治癒力が発揮され、自分でバランスを取っていけるよう手助けしてくれます。

その上でやはり一番大事なのは、自分自身がどう生きるのか。

どのように土を耕し、力強く根を張り、幹を太くし、しなやかに枝を伸ばすのか。


20代さかのぼれば100万人、27代さかのぼれば1億人の関わりがあって、今の自分の命がある。

綿々と繋がり受け継がれてきた、今ある自分の命の強さを信じ、諦めない。

「絶対良くなるんだ!」と、今日一日を大切に積み重ねていく。


その先にきっと、ひとつ、ふたつ、と花が咲き始め、やがて実るのではないでしょうか。

▽ 次ページ
【“独り”ではないからバランスを取れる】