症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2024/01/16 (火)

年始の送り火に想うこと

新年が明け、早くも半月が経ちました。
15日は小正月でしたが、皆さまがお住まいの地域では、「どんど焼き」という行事は行われましたでしょうか?

地域によっては「とんど」「左義長」「鬼火焚き」「ほうげんぎょう」など、さまざまな呼び方があるそうです。

お正月飾りなどの縁起物や書初めを焚き上げたり、お餅を焼いて食べたりしますが、どのような意味があるのでしょうか?
年神様を見送り、一年の幸福を願う
私たちは年の暮れ、家の玄関に門松やしめ縄を飾り、新しい一年の幸福をもたらす力を与えてくれる年神様「歳徳神(としとくしん)」をお迎えします。そして鏡餅やお節料理などをお供えして、おもてなし。
1月15日になると、人間界へ来て下さった神様を天界へお見送りするため、目印となったお正月飾りをお焚き上げする。これがどんど焼きです。


ちなみに歳徳神は毎年一年間、ある方角に滞在しており、これを「恵方」といいます。

節分に食べる恵方巻は、一年の幸福を歳徳神に願いながらいただく風習なんですね。
2024年は「東北東」にいらっしゃいますよ。


この他、
・書初めを燃やした時に火が高く上がると、字が上達する、賢くなる。
・どんど焼きの火で焼いたお餅やお団子などをいただくと、一年間の無病息災がかなう。
・どんど焼きの灰を自宅の庭などに撒くと、家内安全などのご利益が授かれる。
などの言い伝えが。


またどんど焼きは、子どもが神様の遣いとなり行われる、子どもたちが主役の行事でもあるそうです。
思えば私の地元では、通っていた小学校の校庭に竹を組んだ山が作られ、そこに地域の子どもから大人まで集まり行われていました。
目には見えないものを大切にする
「左義長(さぎちょう)」という別名にもあるように、もとは平安時代に宮中で行われていた行事が起源となっているそうで、陰陽師によって行われる禊の要素もあったようです(※)。


目には見えませんが、日本では古来より「八百万の神」というようにあらゆる神様の存在を身近に見出し、願い、祈り、恵みに感謝してきました。

科学の発展により目に見えるものが増え、視覚的・数値的に明らかなものへの価値が高まりましたが、それでも明らかに見えないものもあります。


人の心、想いは、そのひとつではないでしょうか。


でも人の想いも、見ようとすれば、ちょっとした表情や、何気ない言動から感じられます。

お祭りなどの行事は、
ひとりひとりが皆の幸福を心から願い、平和と安寧を祈り、今この瞬間にいただいている命への感謝の気持ちが集まった、私たちの心の奥深くにある温かい想いを、形として表したものなのかもしれません。

また、神様自体は見えなくても、
私たちの力の及ばない、大いなる自然によって、私たちは包み込まれ、守られていることが感じられます。


目には見えないもの。
でも、見ようとすると見えるもの。

そのような目を大切にして過ごしていくと、
周りの人々の温もり、大いなる自然の温もり、そして自分の中にある温もりに気づき、
いつの間にか、心が穏やかになっていきます。

そのような、穏やかな心の和が広がる、一年にしたいですね。




(※)お正月のめでたい遊戯とされる打毬(だきゅう)に使われる毬杖(ぎっちょう)。
祝儀物として贈られる風習があり、破損した毬杖を陰陽師が集めて焼く行事が、左義長の起源という説があります。



[参考資料]
▼ しめ縄飾りのお焚き上げ。小正月のどんど焼きについて解説。左義長、ほうげんきょう、その他の呼び名についても解説。
▼ どんど焼きとは 意味や由来|知っておきたいお正月の豆知識
▼ 歳徳神(としとくしん)
▼ 左義長