症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2023/06/13 (火)

蒲公英(ほこうえい)

身近なタンポポ
子供の頃から親しみ、身近な植物であるタンポポ。
ドラマでも度々万太郎が話しかけたり、名前の由来について子供たちに教える場面もありました。

花の形が太鼓に似ていることから江戸時代頃までは「鼓草(つづみぐさ)」と呼ばれ、その太鼓を叩く音「ポンポン」から「タンポポ」と呼ばれるようになったとか(諸説あります)。

一つの黄色い花に見えますが、実は小さな花が円盤状に集まったもの。
花が咲き終わり種子ができると、ほわほわの白い綿毛が完成。ふわぁ~っと風に乗ってたくさん種まきできるようになっています。
 
蒲公英の効能
漢字では「蒲公英」と表記され、漢方生薬としては「ほこうえい」と読みます。

キク科モウコタンポポまたはその他同属植物を指し、中国では全草(花、葉、茎、根っこ全て)を用いますが、日本では根っこを乾燥した「蒲公英根」が流通しています。
苦味のある蒲公英の代表的な作用が、炎症を鎮めて解毒し腫れをとるという働き。
漢方の処方には含まれていませんが、乳腺炎でしこりや腫れ、熱感などがあるときに煎じて飲まれることがあります。

同じように苦味があり熱感や腫れをとる働きをもつ「牛蒡子(ごぼうし)」も有名。「助産師さんから聞きました」と買いに来られる方もいらっしゃり、蒲公英根と一緒に用いられることもあります。

乳腺は、漢方的にみると「肝」と「胃」の経絡の通り道。蒲公英はこの経絡に作用するので、効果的なんですね。


中国ではこの他にも、皮膚の化膿や虫垂炎、膀胱炎、結膜炎などの炎症や化膿に対して、複数の生薬とともに漢方薬処方として用いられているようです。


冷やす作用があるので冷えの強い方は控えめに。
飲み過ぎると下痢になることもあるのでご注意ください。


一方 “たんぽぽコーヒー”は、乾燥した根を焙煎しているので温める作用を持っています。
カフェインを含まずコーヒーのような香ばしさがあるので、日常的に飲まれている方も多いですね。


白い綿毛となってあちらこちらに種を蒔き、毎年春になると足元で黄色い花を咲かせてくれているタンポポ。
健気な中に生き抜く力強さを感じ、見ると明るい気持ちにさせてくれます。
こんな身近なタンポポにも、私たちの祖先は助けられてきたんですね。
 
性味苦・甘/寒
帰経肝・胃
主な効能清熱解毒・消腫散結/利水通淋・清利湿熱/清肝明目
 
 
 
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〔参考資料〕
『中医臨床のための中薬学』東洋学術出版社