症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2022/08/16 (火)

9月9日は重陽の節句

日本に伝わる五節句
陰陽学説発祥の地である中国では、奇数が「陽(発展)」の数字として縁起が良いとされています。そのため、下記のような奇数が重なる日を季節の節目「節句」とし、昔から年中行事が行われてきました。日本にも平安時代にこの風習が伝わり、現代まで受け継がれています。

 1月7日 人日の節句(七草の節句)
 3月3日 上巳の節句(桃の節句)
 5月5日 端午の節句(菖蒲の節句)
 7月7日 七夕の節句(星まつり)
 9月9日 重陽の節句(菊の節句)

とくに奇数の最大数「9」が重なる日は「重陽の節句」とよばれ、不老長寿や健康を願う日としてお祝いされています。
重陽の節句の行事食
邪気を払い長寿の効能があると古くから信じられている、菊の花を日本酒に漬けた菊酒が有名です。

また、もともと重陽の節句とされた旧暦の9月9日は、現在の10月中旬頃。
秋に旬を迎える栗のご飯や秋茄子の料理をいただき、収穫を祝う行事としても大切にされています。
「くんち(9日)に茄子を食べると中風(ちゅうぶ)を病まぬ」という言い伝えもあるそうです。
(※中風:ここでは、悪寒・発汗・発熱・咳・頭痛・肩こり のことを意味します。)
薬膳的効能
各食材の働きも考えつつ、季節の節目を感じてみてはいかがでしょうか。
 
菊花
性味甘・苦/微寒
帰経肝・肺
主な働き
● 発熱・頭痛・咳などを引き起こす風邪を追い払い、身体にこもった熱を冷ます。
● 目の充血、イライラや頭痛、のぼせ、めまいなどを起こす余分な熱を鎮める。
● 痛みや赤み、化膿を引き起こす炎症をしずめ解毒し、腫れ物を小さくする。
生薬としては品種により「黄菊花(抗菊花)」「白菊花」「野菊花」に分類され、効能も区別されています。

発熱やのどの痛みがある風邪のひき始めには、緑茶とともに熱湯を注いで。
お刺身と一緒に食べると食中毒予防にもなります。

行事食としては、お茶やお酒に浮かべたり、お浸しや和え物にしたり…
華やかな色味、独特の香りや苦味を楽しみつつ、夏の疲れを癒すのもいいですね♪
 
性味甘/温
帰経脾・胃・腎
主な働き
● 胃腸の働きを整えて、気を補う。
● 血のめぐりを良くして、出血を止める。
● 加齢に伴う腰痛や関節痛、筋肉の衰えに関わる腎の働きを補う。
渋皮には苦味のもとタンニンが含まれ、抗酸化作用による老化防止が期待されています。
アンチエイジングのためにもたくさん食べたいところですが、大量摂取で消化不良を起こすので1日10個程度までに。

同じく胃腸の働きを助けて気を補う、お米との相性は抜群。
季節の変わり目は栗ご飯で、元気に秋の訪れを味わいましょう♪
 
茄子
性味甘/涼
帰経脾・胃・大腸
主な働き
● 身体にこもった余分な熱を冷ます。
● 排尿を促し、むくみをとる。
● 消化機能を助け、胃腸の働きを回復させる。
● 血行をよくする。
夏野菜のイメージがある茄子ですが、9月から10月にかけて収穫される秋茄子も美味しいですよね。

日差しの強い夏に育てられた茄子は、皮が厚く実が詰まった食べ応えのある茄子に。
昼夜の気温差と穏やかな日差しのもと秋に育てられた茄子は、皮が柔らかく水分を多く含み、甘味や旨味が強いそうです。

夏バテで食欲低下気味な方は、ネギ、生姜、ニンニクなどを使った麻婆茄子がオススメ。
秋茄子なら焼きなすや煮浸しに、ネギ、ミョウガ、カツオ節をたっぷりトッピングすると◎冷え性の方でも安心です。

9月初旬はまだ夏茄子が出回っている頃かと思いますが、茄子の違いから季節の移り変わりを感じるのも楽しいですね♪



※用語解説※
【性味】
「酸・甘・辛・苦・鹹(五味)」
‥‥味や機能を五段階で分類
「熱・温・平・涼・寒(五性)」
‥‥食べ物の性質(身体を温める・冷やす)を五段階で分類

【帰経】
陰陽五行説をもとに五味と対応した五臓六腑のこと。対応する臓腑の機能を助けたり影響を与えやすいと考えられています。
(例)五味「甘」→帰経「脾・胃」
‥‥胃腸の働きを整える。食べ過ぎると弱らせる。

〔参考資料〕
『薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖』西東社 発行