症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2022/08/16 (火)

「無常」に感じること

先日新聞を読んでいて、「無常という希望」という言葉が目に留まりました。

「諸行無常」とは仏教用語ですが、「この世のあらゆる物事は全て、常に移り変わり、生まれては消え、永遠に変わらないものはない」という、この世の本質を突いた言葉。


皆さまは「無常」という言葉に、どのようなことを感じますか?


わたしはまず、
『平家物語』冒頭の「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」のように、
儚さや切なさを感じます。


また、慣れ親しんだ物や環境が変化していくこと、あるいは生死への
不安や恐れ、寂しさを感じることもあります。


でも一方で、
四季の移り変わりや新しい仲間の加入、人や動物、植物の成長などの変化は
楽しみや喜びを感じる場面です。



そして今回出逢った「無常という希望」という言葉。
改めて考えてみると、たしかに無常には希望がひそんでいました。


何かしらの病や災難、悩み、苦しみ、悲しみ…
そういう状況に直面したとき、
「いつまでもこの暗闇が続くのではないか…」
と希望を見失ってしまいやすいです。
前に歩き出したと思っても、
「これでいいのか?」と不安になったりもします。


でも、世の中「無常」。
いつまでも同じであり続けることはできない。
それは、暗闇も暗闇であり続けることはできないということ。
そして私たち自身も変わり続けているということ。
必ず変化し、暗闇を抜け出す時が来るということ。
そこに、希望を感じます。



東洋哲学では、「陰陽消長(陰陽盛衰)」という言葉があります。
横一直線のグラフのような、完全に一定した状態はなく、
波線グラフのような、常に一定の範囲内で流動的に変化し続けバランスをとりながら維持している、
それが本来の状態である、という意味です。


私たちの身体も、心も、自然も、あらゆる事象にも、波はあるもの。

悪いことがあっても、必ず良いこともある。
失敗することがあっても、必ず成功することもある。
泣くときもあれば、必ず笑うときもある。
雨が降る日もあれば、必ず晴れる日もある。


だからこそ、
良い波に乗っている時は謙虚に慎み、
良くない時には希望を持ち続けることが、
人生の無常の波を泳ぐコツなのかもしれませんね。