症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2021/12/09 (木)

よい一年は、よい一日から。無病息災を願う「お屠蘇散」

皆さまは毎年元旦に、お屠蘇散を召し上がりますか?
改めてお屠蘇散に込められた意味を知ることで、より清々しいお正月をお迎えいただければ。
【お屠蘇散の由来】
お屠蘇は中国の三国時代に、華佗(かだ)という名医が薬草を調合して酒に浸して飲んだのが始まりと言われています。

「邪気を屠(ほふ)り(=祓い)、心身を蘇らせる」という意味で名づけられ、正式には「屠蘇散」「屠蘇延命散」と呼ばれます。

日本では平安時代に伝来し貴族の間で広まり、江戸時代になると庶民も口にするように。今に伝わるお正月行事のひとつとなりました。

元旦に飲むことで昨年の邪気を祓い、今年一年の無病息災と延命長寿を祈ります。
【お屠蘇散の配合】
5~10種類ほどの生薬が配合され、地域やお店によってバリエーションは様々。

漢方みず堂オリジナルのお屠蘇散は、以下のような配合です。
乾姜胃腸を温め、整える。
桔梗咳や痰を鎮め、のどを潤す。
陳皮胃腸を整え、気を巡らせる。
丁子ウイルスや細菌を抑制し、胃腸を整える。
山椒胃腸を整え、身体を温める。
桂皮身体を温め汗を発散し、血の巡りをよくする。
一つ一つの生薬の効能を見ただけでも、お正月から元気に過ごせそうな気分になります。
私も毎年家族でいただきますが、とても香りがよく美味しいと好評です!

また本草綱目(代表的な中国の医薬書)によると、生薬を浸すお酒は「少量であれば血の巡りを良くし、寒気を除き、薬を全身に巡らせる効果がある」と書かれています。
【より健康に近づく?!飲み方】
(1)大晦日の夜、お酒や本みりん350ccに1包入れて一晩(8時間程度)寝かせます。
お好みで漬け方を変えても♪
  • すっきりした味を楽しみたい方
    お酒(日本酒。お好みで白ワインでも〇)
  • 甘味とコクを楽しみたい方
    本みりん
  • 両方を楽しみたい方
    お酒と本みりんを1:1の割合
(※みりんは料理用では美味しくないので、本みりんをご使用ください。)

お屠蘇散として飲む以外にも、醤油に浸したりお風呂に入れたりしても香りを楽しめます。
 
(2)元旦、若水(元旦の朝に汲んだ、新年最初の水)で手を清め、神棚や仏壇を拝み、家族に新年のあいさつ。
おせち料理などを食べる前に、お屠蘇散をいただきます。
 
(3)家族全員、東の方角を向きます。
(4)飲む順番は二通り。
込められた意味が異なります。
年少者から
若い人からエネルギーを分けてもらう、という意味。毒見の名残とも。
年長者から
年長者の英知を分けてもらう、という意味。

年によって順番を変えてみてもいいですね。
厄年の人は、厄年以外の人に厄を祓う力を分けてもらうため、最後に飲みます。

飲むときには、「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱えます。
お子様やお酒の弱い方は飲めなくても大丈夫。皆で祈願できます。



日本では1,200年以上続いてきたお屠蘇散。
こうして配合生薬や名前、飲み方に込められた願いを紐解くと、より一層大切に伝えていきたい文化だなと感じます。
「健康・長寿」はいつの世も、多くの人々にとって切実な願いなのかもしれません。

よい一年は、よい一日から始まる。
このお正月は改めて、家族や友人とお屠蘇散を分け合いお互いの無病息災を祈りたいですね。


〔参考資料〕
▼お屠蘇(とそ)の意味と作法、作り方