症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/25 (水)

胃腸が元気になると、心のエネルギーも湧いてきた!

■普通の食事がしたい

秋のこと、すらっとした若い女性がお母様と一緒にいらっしゃいました。

少し食べただけで胃がムカムカしてしまう。食べられるものといえば、あっさりした鍋。お母様は娘様のための食事は、家族のものとは別に作られているとのこと。

こうなったきっかけは、高校生の頃の人間関係トラブル。ショックから、不安感やイライラが出るようになり精神科へ通院を始めた。胃の調子が良くないのはその頃から。

普通に食べられるようになりたい、感情をコントロールできない事が苦しい。傍で見守るお母様も心配で仕方がないご様子でした。

体質は、元々少食で疲れやすい、足が冷える、手や顔に汗をかきやすい、立ちくらみ、目の疲れ、鼻水・鼻づまり・くしゃみ、つかえる感じ、ゲップでやすい、寝つき悪く夢をみる、生理1、2日目に腹痛・腰痛、経血に塊あり

■胃腸は気血生化の源

消化吸収の働きを担うのは、「脾」の臓腑。食べたものから、活動力となる「気」、体を滋養する「血」、潤いを保つ「津液」が作り出されます。これら3つは、体をつくる基本要素。全身のバランスを維持する為に、土台となる臓腑です。

 

この方の場合、元々「脾」の力が弱く、体の気血が不足しがち。血を蓄える「肝」に十分な栄養が届いていない状況で、大きなストレスがかかってしまった為、「肝」による気のコントロールが崩れ、気分の波が出てしまったのだと考えられました。さらに、「肝」の暴走が「脾」を押さえつけ、消化の機能をさらに弱らせていました。

 

そこで、体を養う「脾」を建てなおすことに主軸を置きながら、「肝」の疏泄も助ける漢方を飲んでいただきました。

■経過

1ヶ月後 胃のムカムカが少しずつなくなってきた。久しぶりにごはんをお茶碗一杯食べた。立ちくらみ、喉のつかえる感じがなくなった。

2ヶ月後 油っこい食べものも、以前より食べられる。

3ヵ月後 食事の量が増えてきた。足の冷えがなく、冬でも湯たんぽなしで寝られる。熟睡できている。

4ヶ月後 気分の波が少し落ち着いてきた感じがする。

5ヵ月後 生理前のイライラ・落ち込みをあまり感じなかった。生理痛が楽になった。

 

今ではご家族と同じ食事を食べられるようになり、食事時は家族団らんを楽しまれています。そして、体の元気と共に気分の波も落ち着き、以前より明るくなられたように感じます。何か新しい事を始めたい!と、初めてのアルバイトに励んでいらっしゃるご様子に、とても嬉しく、人はこんなに変わるものなんだととても感動しました。