症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2025/09/16 (火)

月と共に

陽ざしはまだ夏の暑さが続いていますが、日の長さは短くなってきましたね。

私は四季の中で秋が一番好きです。
夏の終わりに哀愁を感じ、心地よい風とこれから訪れる冬の前に漂う、束の間の穏やかな空気感が好きです。
しかし、ここ近年は残暑が厳しく、秋を感じられずに冬がやってくる印象ですね。
そのため今回は、残暑が続く中でも秋の訪れを少しでも感じて、楽しんでいただけたらと
"お月見"のお話です。
お月見は、十五夜とも言われますが、旧暦八月十五日の月を「中秋の名月」とよんでお月見をする習わしが平安時代頃から続いています。


今年の中秋の名月は10月6日。
毎年その日付は異なり、去年は9月17日でした。
中秋の名月と言うと、満月をイメージしますが旧暦八月十五日のことであり、満月はしばしばこれより1~2日ほど遅れることがあるそうです。

この日は秋の収穫に感謝し、月を鑑賞する日です。
丸い月に見立てて、月見だんごや里芋をお供えし秋の七草を飾り付けます。


春の七草は「七草粥」として1月7日に食して無病息災を願いますが、秋の七草(萩、尾花、桔梗、撫子、葛、藤袴、女郎花)は
主に観賞用となります。特に尾花(ススキ)は稲穂の代わりに神様が宿る依り代として、また魔除けの意味も込めて飾られます。
葛や桔梗は漢方薬にも使われ生薬として馴染みがあります。


また、中国では月餅を食べる習わしがありますね。
最近では月餅を買う方も多いのではないでしょうか。


私は月を眺めるとスーっと穏やかな気持ちになれたり、時にはわくわくしたエネルギーを感じます。
どれだけの人がこの月を眺め、思いを馳せてきたのでしょうか。

現代では感じることが少ないと思いますが、昔の人々にとって月明かりは暗闇を照らしてくれる
ありがたい存在でした。
さらには明かりとしてだけではなく、月の満ち欠けで生活のリズムを測っていたはずです。
そしてまた、昔の人々は月の歌を多く詠まれていたそうです。
それだけ、人々の暮らしの中に「月」はなくてはならない存在だったのでしょう。


そのような月も、誕生してから少しづつ離れながら地球の周りをまわっているそうで、
そしていつか止まる日が訪れると言われています。

遥か未来では私たちが見てきた景色や味わってきた季節、時の流れがなくなってしまうのかもしれないと思ったら、
この当たり前の日常が愛おしくて尊いものなんだなぁと感じます。


現代は月の存在が薄れていたり、月明かりに頼る機会もめったにないですが、地球の自転軸が保たれているのは月の引力があってこそ。
改めて、穏やかな暮らしに月の存在はなくてはならないと気付かせてもらえました。


厳しい残暑が続いていますが、夜空に浮かぶ月を眺め、秋の訪れを感じながら、
この日常に感謝したいと思います。

皆さまも月を通して心穏やかな日々が過ごせますように。


参考文献:「月と暮らす」 誠文堂新光社

藤井 旭著