症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2025/08/10 (日)

星しるべ

最近いつ夜空を見上げましたか?

「星に手が届きそう」。
最後にそう思ったのは、いつでしょうか。

光が溢れた夜の街では、星の煌めきが雲の隙間に隠れてしまうことがあります。

真夏の夜は湿った空気を肌に纏うことが多く、過ごしやすい室内へと足早に戻ることも。



小学生の頃、星座早見表を使って星を観察する夏休みの宿題がありました。
田舎の夜空では小さな星たちがキラキラと輝き、母の優しい声のとなりで早見表をぐるぐると回したことが思い出されます。
遠くにあるはずの星が、手を伸ばせばすぐそこにあるような気がしました。


「おじいちゃんはお空の星になったんだよ」。
星と大切な人の命が繋がった記憶も、皆さんの心の中にしまってあるかもしれません。


いつも、私たちの傍にいた星。
夜空を見上げたときに見える星たちは、たくさんの年月を重ねて初めて、誰かの目に映る煌めきを放つことができるのです。



大人になると、見えなかったものが見えるようになったり、反対に、見えていたものが見えなくなったりすることがあります。

どうして夜空の輝きがあんなにも遠いのか。
不思議なほど近くに感じられていたのに─。

それはもしかすると、星の見方が分からなくなっているからかもしれません。

優しさに満ちたとき、愛おしい人に「大好きだよ。」と伝えたくなったとき、涙が溢れそうなとき。
見上げれば、星はすぐ近くで私たちを見守ってくれています。

目を凝らしてみると、その瞬きはずっと会いたかった大切な誰かの命の輝きにも見えます。
「いまのままで大丈夫だよ、大丈夫」。

いつか読んだ本の中に、旅立った人の命は、いまを生きる人の心の中に煌めきとして残されるとありました。



8月は命について考える月でもあります。
そっと触れてみると最後にはきっと、温かな気持ちになるはずです。

そして─。
本当に大切なことは、煌めきは初めから、私たちの中にあるということ。


夜空は繋がっています。
煌めきを重ね、星しるべに変えて。
星たちを近くに感じられるような、優しい夜が訪れますように。