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『 自ら健康をつくる~動的平衡の概念 』

カテゴリー:漢方コラム
漢方コラム
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それぞれの個性あるコラムをどうぞお楽しみください。
『 自ら健康をつくる~動的平衡の概念 』

気温の変化が激しく、一年で最も風が強いといわれる春。身体も衣替えを始めるこの時期は、自律神経のバランスが乱れやすく体調が変わりやすい時でもあります。

アレルギー体質の私にとっても、変化の春は少し憂鬱でした。しかしある概念に出会いその思いが少し変わりました。今回は分子生物学者 福岡伸一著『動的平衡』より、身体に備わったなんとも賢いしくみをご紹介したいと思います。

普段私たちは髪の毛や爪、肌が絶えず生まれ変わっていることを実感できると思います。ですがそれはなにも表面だけのことではなく、身体中の細胞はひとつの例外もなく分解と合成を繰り返し、なんと一年もすれば総取っ替えされているのだそうです。


私たちが日々の食事等から取り入れた物質は、取り込まれるとほんの数日間で瞬く間に全身に散らばって身体の構成成分となり、同時にその瞬間までそこにあった身体の一部は外に捨てられます。つくる量と壊す量がほぼイコールになっているので変わらないように見えるだけで、実は身体は日々新しい姿にどんどん生まれ変わっているのです。私たちはこの変化する事でバランスを保つ“動的平衡”のしくみのおかげで、たとえ病気になったとしても自力でバランスを回復し、傷を癒すことができるのです。


またこの動的平衡のしくみから考えると、何かしら症状が出ている状態は、身体が新しい環境に合わせて変化しながら再調整している最中であるとも捉えられます。当時ひどいアトピーに悩まされていた私は、辛い今まさにこの瞬間も、身体は着実に治癒に向かっているところなのだと気付いた時、気持ちがふっと軽くなり、同時にそれまで嫌でしょうがなかった自分の身体がとても有り難く、大切に感じられようになりました。


こうした身体の絶妙で精巧なしくみを知ると、自然には敵わないなと改めて思います。一番の健康法とは、なにも特別なことをすることではなく、本来備わった力を充分発揮してもらえるよう力を抜いて普通に生活することなのかもしれません。一に養生、二に薬!ちなみに漢方薬は生薬の集合体が複雑に働くことで、自然のリズムを乱すことなく動的平衡を押したり引いたりしてバランスの回復を助けてくれますよ。


私はこの動的平衡の概念を、つらい時には希望として、そして調子が良い時には油断への戒めとして心に留めています。今の行いが明日以降の自分を文字通り形作るのだということを意識して、自ら健康をつくれるようになっていけたら最高だなと思います。


(新垣いつみ)


このコラムは漢方みず堂暦2016年3月号に掲載されたものです。
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