漢方よもやま話

「殴られた言葉」

カテゴリー:心の栄養
心身一如
心と体は一つという漢方の考えがあります。
体が元気に美しくなるには、心の美しさも必要です。
皆様に本当の意味で元気に美しくなっていただきたいと願い
「心の栄養」になるお話をお送りいたします。
「殴られた言葉」

かなり以前のことであるが、テレビで「進行性筋萎縮症」という難病と向きあう子どもたちの記録が放映されたことがあった。それはそのまま死と真向かう子どもたちの記録でもある。画面はすでに症状が進んで、ベッドの上に寝たっきりになった十六才の少年のところへ、車いすの十二、三歳の少年が近寄って対話する場面であった。ベッドで寝ている少年の画面に「この少年はこの撮影の五日後に死亡」と記されてあった。


車いすの少年は、五日後に亡くなっていく少年に「生きるってどんなことだ」と尋ねるのである。


ベッドの少年は答えた。「全力投球!」。


澄んだ静かな声であったが、その声は百雷が落ちたように私の全身に響いた。まさしく「言葉によって殴りつけられた」という実感であった。


私は今も時折、この「全力投球!」と言った少年の言葉を、声を出して念仏のように唱えてみる。それによって明日もある、明後日もあると思って生きている私に、「今日感会(こんにちかんかい)、今日臨終(こんにちりんじゅう)」という、普遍の生命の真実を呼び覚ましてくれる。


生きるということの喜びは、生きた言葉に出合ったという喜びではないだろうか。


※松本梶丸著『生命(いのち)の見える時 一期一会』(中日新聞本社)より抜粋


この文章は漢方みず堂暦2014年2月号に掲載されたものです。
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