河端孝幸の読む漢方

世の中の陰と陽

世の中の陰と陽

野球の世界で、ボールが止まって見えた。といったのは、打撃の神様と謳われた川上哲治氏。
もうご存じない方も多いでしょうけれども、巨人がV9を成し遂げたときの監督でした。その川上氏の下で、王貞治氏、長嶋茂雄氏が3,4番を打っておりました。
ボールが止まって見えるという境地までは行かなくとも、私も貴重な体験をしました。
8/30に関東への初出店となる「漢方みず堂まるひろ川越店」を立ち上げ、ゼロからのスタートを切りました。
お客様がいらっしゃるか、お客様に喜んでいただけるか。そんなことを考え、浮き足立って普段間違えたことのないような間違いをしたり、何をしたらいいのかもわからずただボーっとしていたり、明らかに日常と違った自分がいました。さらに家に帰ってからもその興奮が収まらず、何か変な気持ち。それが10日間ほど続きました。

湧き上がる感謝

その時にふと感じたこと。
今ここにいる。今ここに立っている。お客様のお役に立つために。
今ここにいられる。みんなと一緒にいられる。こんな尊い仕事をさせていただいている。
何とかお客様はもちろん、まわりの皆さんの期待に答えようとしている自分がいる。
すべて有難い。有難い。感謝。そこはかとない感謝。
お客様は必ずや感じ取っていただける。そしてご来店いただけるはず。
ジタバタせずに、自分の役目をきちんとする事。今を見つめ、感じること。
きっと、その先にあるのは、「無」の境地。三昧の境地。
「なにも思わぬは仏の稽古なり」=「三昧」
三昧とはなりきること、と30年位前に財団法人天風会の行修会で教わりました。
自分自身になりきる。何も無いから、恐れるものも悲しむものも無い。何も思わず、考えず、あるがままの自分自身を感じ取ること。

人間としてのあるべき姿

心の奥底から湧き上がってくる使命感、感謝の念、安堵感、安心感、清き心、清々しさ。
ジタバタせずに、目の前のことに一所懸命になること。それが最善であり、それがすべて。
そして周りへの感謝。店をオープンさせていただいたこと、応援をいただいていること、何もかもがすべて有難い。そんな有難いことに囲まれ、あえて色々な広告や販促をするのではなく、本当にどっしりとしっかりとお客様をお迎えすること。そして笑顔になって帰っていただくこと。それしかないなと改めて感じました。
そう思うとふっと肩の力が抜け、嬉しさ、有難さがこみ上げてきたと同時に、お客様にご来店いただけるという、ゆっくりと、ゆらゆら、下から包み込んでくれるような確信。強がりでもなく、偉ぶるのでもなく、ただそう思えてきました。
川上哲治氏のようにはいかないまでも、人生を生きる目的や、この仕事をさせていただいている目的や理由、私ができることなど、本当に心が平穏となり、有難さや感謝を感じ取れたのでした。

世の中、さまざまに凄まじい勢いで動いていて、ドッグイヤーという言葉が使われたのは、もう昔の話。2020年には5Gとなり、今の通信速度の1000倍での通信が可能だといわれております。
しかし、我々人間として頑として存在する感謝とか、ありがとうの精神。その根底の部分がスピードが増せば増すほど、大切で重要になってくるのではないかと感じます。世の中のスピードを陽とすると、人間としてのあるべき姿は陰。陰・日なたになり人のお役に立つこと。常にそうありたいものです。