症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/27 (金)

紫蘇・蘇葉(そよう)

赤紫蘇・青紫蘇
日本ではとても有名な保存食である、梅干しに入っている赤ジソ。
梅干しは日本独特の食品で、シソの紫色の葉に含まれているアントシアニン色素が梅のクエン酸などで酸化されると赤紅色に変化することによって、梅干しが赤くなるそうです。

気の巡りを良くし、胃腸の働きを回復させる効能もあるので、プチうつの時などには、青ジソや『ゆかり』を利用するのも手軽で良いですよね。

そして、お刺身によく添えられている青ジソ。
これにも意味があり、魚介類の中毒予防、中毒症状の嘔吐や下痢の改善にも効果があると言われています。
実際に、魚貝による蕁麻疹の時などに用いる「香蘇散」という漢方には、紫蘇が入っています。
 
漢方生薬としての紫蘇
漢方生薬としては紫蘇や蘇葉(そよう)と呼ばれて使われています。

蘇葉はシソ科シソの葉。または葉先がギザギザのチリメンジソの葉を乾燥させて使います。
原産地は中国で、日本には10世紀頃渡来しました。

紫蘇や薄荷のように芳香性の高いものは、保存により有効成分が減じやすいため、なるべく新しいものが良品とされます。
また、長時間煎じないようにすることが大切で、本来は後下(こうげ)または後煎(あとせん)と言って、他の生薬を20分ほど煎じた後に加えることで煎じ時間を少なくするのが良いとされています。
 
こんな時におすすめ
(1)妊婦・お年寄りの風邪の引き始め

風邪をひいた時に有名な葛根湯や小青竜湯などは、発汗させて回復させる効果がありますが、お年寄りなどの体力がない方、または妊娠中の方には、作用が強すぎます。この蘇葉が入っている「香蘇散」を用いると穏やかな効き目で治してくれます。

(2)気滞によるつわりや胎動不安(切迫流産)

マタニティーブルーといわれるような、妊娠中の気分の落ち込み、それに伴うつわりや胎動不安に用います。

(3)食欲不振・嘔吐下痢や喉の異物感

夏の食欲不振・暑気あたりに有名な「カッ香正気散」にも蘇葉が入っています。また、喉の違和感(梅核気)に有名な「半夏厚朴湯」にも蘇葉が入っています。



シソは、発汗を促し、冷えをとるので、この梅雨時期の冷えなどで調子を崩した時にもピッタリ。
身近な食材として取り入れ、元気に夏を迎えましょう!
 
性味辛/温
帰経肺・脾・胃
主な効能散寒解表/理気寛中/行気安胎/解魚蟹毒
代表処方カッ香正気散、九味檳榔湯、香蘇散、柴蘇飲、参蘇飲、柴朴湯、半夏厚朴湯など
 
 
 
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〔参考資料〕
『中医臨床のための中薬学』東洋学術出版社