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後鼻漏と漢方

後鼻漏と漢方

3年治らなかった後鼻漏が治った実例

56歳、働き盛りの男性。 きっかけはストレスだと感じていらっしゃいました。最初は痰がよく出るなぁと思っていたのが、だんだんとひどくなり、鼻から流れる痰を吐き出さないと気持ちが悪いし、どんどん溜まるので本当にしんどいということでした。特に仕事終わりが辛く、鼻うがいを1日4〜5回もしていました。TVCMやインターネットでみた辛夷清肺湯を半年ほど続けて飲んでいましたが、余り調子はよくならず、どうにかならないかというご相談でした。後鼻漏以外はとてもお元気な方ですが、ストレスフルな生活をなさっていて、バランスを崩している印象でした。 そこで体の汚れた水を排出しながら、ストレスによる慢性炎症を改善できる漢方を飲んでいただいたところ、1ヶ月後には、鼻うがいの回数が激減!3ヶ月後には全く気にならなくなりました。

西洋医学的な原因と治療

後鼻漏とは?

鼻の中は粘膜が覆っていて、鼻水などの粘液が1日に6リットル近くつくられます。この粘液は、粘膜の表面にある「繊毛(せんもう)」という細かいブラシのような構造によって喉の奥に送られ、私たちは知らず知らずのうちに飲み込んでいます。病気でなくても喉に鼻水や液がたまることはあり、鼻や喉を保護する体の働きです。 しかし、この仕組みがうまく働かなくなると、鼻水が増えて鼻の奥にたまったり、粘っこい鼻水が喉に落ちるという症状が現れます。これが「後鼻漏」です。

原因と治療

①副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

副鼻腔に炎症が起き、膿としての鼻水が多量に生産されます。X線検査で副鼻腔に膿が溜まっているかどうかの診断がつきます。マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン)には鼻副鼻腔粘膜の繊毛運動活性化作用があり、カルボシステイン(去痰剤)を併用することで繊毛運動活性化が活発化されます。薬物治療で改善がない場合、内視鏡下での鼻副鼻腔手術が必要です。ただし、手術を行っても後鼻漏の症状が完全に消失しない場合もしばしばあり、特に鼻副鼻腔粘膜に好酸球が多い場合、手術を行っても後鼻漏は改善しないことが多いとの報告もあります。

②鼻炎(アレルギー性鼻炎)

X線で副鼻腔に炎症がなく、特定の原因がない場合、鼻炎として治療することもあります。アレルギー検査し、避けることで症状悪化も予防できます。抗アレルギー剤のうち、ロイコトリエン受容体拮抗剤(キプレス、オノンなど)が有効です。

③上咽頭炎

風邪や、アレルギーなどで上咽頭に炎症が起き、膿が発生します。慢性化することも多く、自律神経症状を伴うこともあります。また、腎臓病や関節炎、膠原病などと関連があるともいわれています。急性であれば抗生物質が処方されますが、慢性化した場合は塩化亜鉛塗布などが行われます(できる施設が限られているのが現状です)。

④加齢による粘膜の変化によるもの

根本的治療法は確立されていません。マスクや加湿などが有効な事もあります。

中医学的な原因と処方

 

<実証>

①肺経風熱

鼻水は黄色か白色で、粘り気があって量が多いです。鼻づまりは継続的だったり間欠的だったりします。嗅覚が低下し、鼻粘膜が発赤腫脹します。 全身では、発熱悪寒、頭痛、咳、痰なども同時に出ることがあります。肺という呼吸器を主るところは鼻と繋がっています。風熱邪毒が肺の経絡へ入り、鼻へ鬱滞すると粘膜を焼き、発症します。

代表処方・・・辛夷清肺湯

②胆腑鬱熱

鼻水は黄色で濁っており、粘稠、量が多く、鼻腔上部から流れ出し、臭いがあり、嗅覚が低下します。鼻粘膜が腫張し発赤が顕著です。激烈な頭痛があり、眉間や頬部に痛みがある場合もあります。全身では喉の乾燥、耳鳴り、目の充血、睡眠不足で夢が多い、怒りやすい、などの症状も同時に見られることがあります。漢方で、胆は自律神経を主る「肝」と連携しており(表裏の関係)、胆汁を貯めたり排出したりして消化吸収の一役を担っている他、胆は肝と協同して疏泄(精神情緒の活動を調節したり、気血を通じさせる)作用があります。胆の気は脳に通じていますし、胆は決断力にも関わっています。感情が抑鬱したり、怒りが過ぎたりすると、胆は疏泄ができなくなり、気が鬱して火へと変化し、胆火が上部を侵犯すると熱が脳へ移り、損傷が副鼻腔に波及して気血を焼灼すると、粘膜を灼いて腐敗させ、鼻水が発生します。

代表処方・・・竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯

③脾胃湿熱

鼻水が黄色く濁って量が多く、鼻腔からチョロチョロと流れ続けます。ひどい鼻づまりになると嗅覚がなくなることもあります。鼻腔内は発赤腫張し、痛みも伴います。特に腫張が顕著です。全身では、頭が重く痛みがある、体がだるい、食欲不振などの症状も出ることがあります。 脾胃とは胃腸など消化機能を主るところです。普段から酒・脂っこいもの・甘いものを好んで摂取していると湿熱(ドロドロしたお水に熱が加わったもの)が発生し、それが溜まってくると胃腸の機能を損ねます。胃腸は食べ物を消化したり水分を運んだりしていますが、その機能が失調すると、必要なエネルギーが作られない上に未消化の汚れたものがたまります。そのために湿熱が上部を蒸し、副鼻腔内に停滞して集まると、副鼻腔内の粘膜を焼灼して損傷し、鼻水が発生します。

代表処方・・・茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯

<実証〜中間証>

①肝気鬱結

症状に波があり、痰や鼻水の形状も様々。全身では、暑かったり寒かったり、胸や脇腹が張る・痛い、口が苦い、喉の乾燥、排尿異常、汗の異常など、自律神経がバランスを取れなくなった場合の症状が多く見られます。 様々なストレスが原因で、肝の疏泄機能に異常をきたし、肝気が鬱結して気滞痰凝となります。鬱から熱や火へと変化して火熱上亢となると、上咽頭や副鼻腔の粘膜を焼灼して損傷してしまいます。

代表処方・・・「柴胡」を含むいわゆる柴胡剤と呼ばれる漢方。抗炎症作用に優れています。

<虚証>

①肺気虚寒

鼻水は白く粘り、鼻がつまります(重い場合も軽い場合もある)。風や冷えなどの刺激で悪化します。全身では、めまいや体の冷え、咳や痰などの症状が同時に出ることがあります。 長患いのために体が弱くなったり、病後の栄養失調などといった原因により、肺(呼吸器系)が虚損して肺気が不足していると、防御機能が弱くなって、外からの邪毒に犯されやすくなり、邪が鼻に停留します。この鼻水は潤いを損傷したものなので、白く粘り気があって無臭です。

代表処方・・・葛根湯加川芎辛夷+肺気を補う黄耆などを配合している処方(補中益気湯など)

②脾気虚弱

鼻水は白くて濃く粘る、または黄色く粘稠、量は多く無臭です。鼻閉が重く、嗅覚が低下し、鼻腔粘膜の腫張がひどくなります。全身では、体がだるくて脱力感があり、食が細くお腹が張る、便が緩い、顔色が良くないなどの症状を伴うこともあります。 飲食の不摂生、過労、悩みすぎによる鬱結などのために脾胃を損傷し、脾胃が虚弱になると消化機能が失調します。そのために「気(元気)」や「血(栄養分)」などが作られなくなると、鼻は気血による栄養を失ってしまい、邪毒により長期間困窮させられると、粘膜が腐敗して濁った鼻水が分泌されるようになります。また脾が弱く水分代謝がうまくいかないと、湿(汚れた水)がたまり、それが上部に移行すると鼻水となります。

代表処方・・・参苓白朮散、補中益気湯などに湿気を取り除けるようなものをプラス

③肺陰虧虚

痰は粘ついて少なく、時にむせたりします。喉の乾燥、不快感があります。全身では頬の紅潮、手足の中心が暑くなる、精神疲労、言葉に力がないなどの症状を伴うこともあります。肺の水分が不足することで火がくすぶっていて、それが上咽頭を上炎するために炎症を起こします。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難な場合も。

代表処方・・・麦門冬湯

④腎陰虚損

黄白色の痰で粘っこいが量は多くない、口が渇くが多くは飲まない、喉の灼熱感や不快感が出る場合もあります。全身では、くらくらする、かすみ目、耳鳴り、不眠、腰や膝がだるいなどの症状を伴うこともあります。 腎(老化を主るところ)の水分が不足したために火を制御できなくなり、上咽頭にくすぶった火が上炎すると、粘膜が損傷し、痰を生じます。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難といわれることも。

代表処方・・・知柏地黄丸