症状別 漢方の教え

KAMPO KNOWLEDGE
更新日:2019/12/20 (金)

朝方早く目覚める時に飲む漢方〜高齢者の不眠〜

朝方早くに目が覚めてしまうタイプの不眠
・明け方トイレに行き、それから目が冴えて眠れなくなってしまう
・夜中に何度もトイレで目が覚める など

眠れない症状に加えて、腰痛や耳鳴り、頻尿などの、いわるゆ老化現象を伴うことがあります。
 
原因は「腎」が弱くなっている
漢方の考え方としては、人間の生命エネルギーである『腎』が弱っている=『腎虚(じんきょ)』と考えます。
「眠る力がなくなってきている」とも言えます。

年齢と共に、自然と弱まっていくのが『腎』。
生命エネルギーが弱る=老化、とも考えられています。

ただ、『腎』は両親から受け継がれるものでもあるので、生まれながらに弱い人もいます。

また、睡眠不足や過度な疲労が重なることでも、腎はどんどんすり減ってしまいます。
腎を補う代表処方
朝方早く目覚める、その他の老化現象がある場合は、『腎』を補う漢方薬が一般的。

ほてりや寝汗・口渇などが強い場合は六味地黄丸(ろくみじおうがん)
冷えやのぼせが強い場合は八味地黄丸(はちみじおうがん)
など、他にも様々な種類を使い分けます。
 
早く起きる+寝付きも悪いという場合
ある程度の年齢になると感じ始める方も多いと思いますが、ひとは年々、体の潤いが減っていきます。
これは「腎」の水(=陰)が減っている証。

そうすると、火を消す水がない状態になり、体の中でちょっとした炎症が起きやすくなります。
このことを「陰虚」と言います。


「腎」には「陰」と「陽」があります。
陰は簡単に言うと冷ましたり、休めたり、回復させる力のこと。
陽は体を温める力のことです。

「陰虚」とは、体の潤いが失われている状態。
冷ましたり、休めたり、回復させる力が弱っている状態のことです。


この陰虚の状態に、
カーっとなったりショックな事が起こるなど、精神活動や睡眠を司る「心」の火の勢いも加わると、
水がどんどん蒸発・・・。
火の勢いを止める術なく、いつも「心」の暴走状態。心が騒いで、ゆっくり眠れなくなります。

人の体は少し体温が下がることでスムーズに入眠できますが、火・炎症を抑えられず、寝付きも悪くなります。


この状態になると、手足のほてりや寝汗、口渇、焦燥感などの熱症状が加わるようになります。
この場合の代表処方
腎陰を補い、熱をしずめてくれる漢方薬が使われます。

黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)など
 
生活養生ワンポイント
体の潤いが不足して起きている症状には、身体を潤し、たかぶった気を鎮める食材がおすすめです。

レタス・ほうれん草・小松菜・アスパラガス・柿・白木耳・白胡麻・卵・豚肉・鴨肉・アワビ・帆立・カキ など
 
証を見極める
典型的な高齢者の不眠のタイプをご紹介しましたが、上記のタイプにぴったり合うという人もいれば、一部は合うけれど…、など人によって様々。
一概に分類できるわけではありません。
実際に現場でも、上記以外の漢方薬を使うことは多々あります。

症状だけをみるのではなく、あくまでも大切なのは、その人の「証」(体質)をちゃんと見極めること。


睡眠薬がないと、眠れない…という方も、今一度自分の体質から見直してみませんか?
そして、自然な眠りを取り戻してみませんか?